東京地方裁判所 昭和61年(ワ)2249号 判決 1986年10月27日
原告 有限会社 マルミツ工芸
右代表者代表取締役 佐藤光夫
右訴訟代理人弁護士 松井邦夫
被告 板橋藤一郎
右訴訟代理人弁護士 高山征治郎
同 池永朝昭
同 亀井美智子
同 中島章智
主文
一 本件訴を却下する。
二 訴訟費用は原告の負担とする。
三 本件につき当裁判所が昭和六一年二月二八日になした強制執行停止決定(昭和六一年(モ)第一一三八四号)はこれを取消す。
四 この判決は前項にかぎり仮りに執行することができる。
事実
第一当事者の求めた裁判
一 請求の趣旨
1 被告が、訴外山福通商株式会社及び訴外宮田雄二に対する東京地方裁判所昭和六〇年(ワ)第三〇九一号建物収去土地明渡等請求事件の判決の執行力ある正本に基づき、昭和六一年二月一四日別紙物件目録記載の物件についてした強制執行は、これを許さない。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
二 請求の趣旨に対する答弁
1 本案前の答弁
主文第一、三項と同旨
2 本案の答弁
(一) 原告の請求を棄却する。
(二) 訴訟費用は原告の負担とする。
第二当事者の主張
一 請求原因
1 被告は、訴外山福通商株式会社及び訴外宮田雄二に対する別紙物件目録記載の建物(以下本件建物という。)を収去しその敷地の明渡を求める東京地方裁判所昭和六〇年(ワ)第三〇九一号建物収去土地明渡等請求事件の昭和六〇年八月二六日言渡の被告勝訴の判決(以下、本件確定判決という。)に基づいて、昭和六〇年一一月五日、訴外李明鮮を訴外山福通商株式会社の承継人とする承継執行文を得て、昭和六一年二月一四日本件建物の収去及びその敷地の明渡についての強制執行に着手した。
2 しかし、本件右建物は、原告が訴外山福通商株式会社より、昭和六〇年三月一七日、敷金三〇〇万円、賃料一ヶ月三万五〇〇〇円、賃貸借期間五年の約定で賃借して、以来入居使用している。現在右建物の二階は会社従業員李中歡が居住し、階下は会社の営業用材料(警報器、額縁その他)の置場として使用している。
3 よって、原告は、被告に対し本件強制執行の排除を求める。
二 被告の本案前の主張
1 被告は、本件確定判決につき、昭和六一年八月一日、原告を訴外宮田雄二の承継人とする承継執行文の付与を受けた。これにより、原告は、本件確定判決に基づく執行法上の義務を負うに至り、第三者として地位を必要とする本件第三者異議訴訟の原告適格を失った。
2 よって、被告は、本件訴えを却下するとともに東京地方裁判所が昭和六一年二月二八日なした強制執行停止決定(昭和六一年(モ)第一一三八四号)(以下、本件強制執行停止決定という。)を取消す旨の判決を求める。
三 請求原因に対する認否
1 請求原因1の事実は認める。
2 同2の事実のうち、現在原告が占有していることは認め、その余は否認する。
3 同3の主張は争う。
第三証拠《省略》
理由
一 被告の本案前の主張に対する判断
1 《証拠省略》によると、被告は、本件確定判決につき昭和六一年八月一日、原告を訴外宮田雄二の承継人とする承継執行文の付与を受けたことを認めることができ、他に右認定に反する証拠はない。
2 右事実によると、原告は、本件確定判決の承継執行文の付与により、その承継人と表示された者であり、第三者異議の訴えにおける第三者としての地位を失い、その結果、本件異議訴訟の原告適格を失うに至ったと解するのが相当である。
なお、かかる場合には、原告の第三者としての本件異議訴訟に基づく本件強制執行停止決定の効力は原告を本件確定判決の承継人としての強制執行については及ばないと解するのが相当である。
二 結論
よって、本件異議訴訟の訴えは原告に原告適格がなく不適法であるからこれを却下することとし、訴訟費用の負担につき民訴法八九条を、適用し、なお、本件強制執行停止決定はその効力を失ったので取消すこととし、その仮執行宣言につき民事執行法三八条四項、三七条一項を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 山口和男)
<以下省略>